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小普連とは?
 「きらら」小普連コラムでは、全国の書店員さんが4つのお題でおすすめ小説を紹介。新刊・既刊問わず縛りは小説本であることだけ! 毎回全国の書店員さんにコラムを依頼しています。近々あなたのお店にもコラム依頼のお電話をかけるかもしれません?!
ときにはなにげなく選んだ1冊の小説の本が
あなたの人生を選択する重要な分岐点になる

《1》 今月飲むのを我慢して買った本

啓文社コア福山西店(広島)突沖千鶴さん

◎さくさく読みやすい東川篤哉さん『館島』は実はおバカキャラの“とんちんかん”が曲者

 彼の作品には、今回も驚かされた。死刑囚は公開処刑され、小学校卒業時に将来を決められ、国営の売春宿があり……。石持浅海さんの『この国。』だ。一党独裁国家である“この国”。数々の事件が起きる。それは治安警察、反政府組織、小学生など様々な立場の人の論理で起きる。そしてまた、解決方法も……。背筋がゾクリとする。それでも、どこかに救いがあるのではないか……と読まずにはいられない。

 石持さんの作品には全く違う味のものがある。『まっすぐ進め』。書店で見かけた美しい女性・秋と友人の紹介で知り合った川端。交際は始まり、身近にある小さな謎を解きながら二人の関係も深まっていく。が、秋には何か抱えている闇があるようだ。その闇の正体を知ったとき、川端は……?

 これはミステリ小説だ。が、「恋愛小説」と評した知人がいる。それに近い感覚かもしれない。読後に爽やかさを味わえる。この本に出合えたのは幸運だ。こんな味のミステリには、なかなか出合えないから。

 なぜか棚の前を行きつ戻りつしてやっと手に取ったのは、東川篤哉さんの『館島』。天才建築士が、館の螺旋階段下で死体となって発見される。死因は転落死……と思いきや墜落死! その死の謎が解けないまま半年後、再び殺人事件が起きる。

 テンポの良い文体で読みやすい“さくさく感”に、東川さん作品には欠かせないおバカなキャラの“とんちんかん”。実はこの“とんちんかん”が曲者だ。「ん?」が「えっ!?」に変わり、最後は「おぉ〜!!」になる。その陰に曲者あり!だ。

 余談だが、とある高校のとあるクラス所有の『館島』は、そのクラスにやって来て以来、本棚に長期滞在することなく生徒の手を渡り歩いているそうだ。


《2》 当店の売れ行き30位前後にいる小説

成田本店みなと高台店(青森)川村佳代子さん

◎誰でも現在の道を選んだターニングポイントがある森沢明夫さんの小説『津軽百年食堂』

 青森という土地は、津軽と南部では同じ県とは思えないくらい気質も言葉も違っていて、そして私は南部の人。とはいえ、せっかく地元、青森が舞台になっているので、まず一作目は森沢明夫さんの『津軽百年食堂』をご紹介します。

 青森生まれの陽一と七海が東京の空の下で偶然出会うことからはじまるこの恋は、ふたりの夢や仕事、それぞれの家の跡取り問題などに悩みつつも緩やかに形を成していく。岩木山や弘前城のさくら祭りなどの鮮やかな風景に包まれながら、百年前の不器用で一途な恋と、現代のふたりの、好きな気持ちだけでは割り切れない迷いやあせりの複雑に交じり合う想いが描かれている。誰にも現在の道を選んだターニングポイントがある。ふたりが選んだ道は、どこに続いているのか。都会で暮らしている人も、故郷で生きている人も、ふるさとを持つすべての人に読んでほしい。

 二作目は日明恩さんの『ロード&ゴー』。家族を人質にとられたという男が、ナイフを片手に救急車をハイジャックした。タイムリミットまでに次の目的地に着かなければ爆弾を爆発させるという脅迫のなか、ハンドルを握る生田は、命懸けで車を疾走させる。この物語、とにかく出てくる救急隊員たちがかっこいいのだ。仲間のために無理難題をクリアしようと走る、まっすぐな熱い心意気にしびれる。そして犯人たちの心の闇まで救おうと奮闘する姿に、胸が熱くなることまちがいなし。

 三作目は西條奈加さんの『善人長屋』。善人ばかりと評判の長屋に引っ越してきた加助。ところがどっこい、大家や店子たちには、みな裏の顔があった。詐欺、情報屋、美人局など、ひとくせもふたくせもある人々のなかにほうりこまれた・本物の善人・加助。この加助のおせっかいのおかげで、長屋の人々はいやいやながら人助けをするはめになる。

 悪人ばかりとはいえ、情に厚く憎めない人々。裏稼業の腕を駆使した活躍におもわずにやりとさせられる。いやな事件ばかりが多いこの頃、物語の中でぐらいスッキリしたいあなたにおすすめです。


《3》 私はこの本を1日1冊1すすめ

紀伊國屋書店さいたま新都心店(埼玉)宇治佐和子さん

◎勇気を出してもう一歩、『ひそやかな花園』は角田光代さんの作品の中で最高傑作です

 誰にでもターニングポイントが存在すると思います。

 ここでご紹介する本は、私にとってのターニングポイントのきっかけとなり、実際に私の救いとなってきた本の数々です。

 まずは、大崎善生さんの『優しい子よ』。私がある目標を達成するためのきっかけをくれた大切な本です。自分の事で精一杯になっていたときに出合いました。誰かを想う優しさは、こんなにも揺るぎのないものなのかと感じる事のできる一冊です。

 山本甲士さんの『わらの人』。それまで接点のなかった遠方の書店員さんと私とを繋いでくれて、すべての人が誰かにとって必要な存在なのだと教えてくれた本です。出合いはどんなときでも「奇跡」なのだと実感させてくれます。

 冲方丁さんの『天地明察』。くじけそうなとき、立ち上がる強さをくれました。自分の信念を貫き通す勇気を教えてくれて、最後の一押しとなる力を持つ一冊です。

 角田光代さんの『ひそやかな花園』。個人的には角田さんの著作の中での最高傑作だと思います。生きているとふいに不安に襲われたりします。「怖い」と何かに怯えるときがあったりもします。けれど、閉じこもっているだけでは何もできないから。勇気を出して一歩踏み出せば、無限の可能性がそこに広がるのです。たった一歩。後ろを振り向けば大きな一歩。そんなふうに温かく包み込んでくれる一冊です。

 色々考えたり悩んだりもするけれど、笑っていよう。楽しい事が一番なのだ。ただ単純にそう教えてくれた破天荒な物語、秦建日子さんの『ダーティ・ママ!』。

 そして、私にとっての大切なものとは何か。それは人が好きだということ。人と関わる事で自分自身を成長させていきたい。誰に対しても感謝の気持ちを忘れずにいたい、と改めて思わせてくれたのが、雫井脩介さんの『つばさものがたり』。

 これからも私はたくさんの本に巡り合うでしょう。私のように、自分に寄り添ってくれる本を一人でも多くの人が見つけて、いつかどこかでその人の力となってくれることを願ってやみません。


《4》 この小説家の作品は絶対に売りたい

八重洲ブックセンター本店(東京)平井真実さん

◎心と身体をリフレッシュ、恒川光太郎さんの小説はとにかくハードカバーで購入したくなる

 文芸書担当であるため、仕事としていろいろな小説をプルーフ(発売前の簡易本)で読みますが、ハードカバーで購入したいと思う作家はそう多くありません。その中でも個人的に大好きな作家に恒川光太郎さんがいます。今までに5冊小説を発表していますが、その中でもこの2冊は秀逸です。

夜市』は幼い頃に弟と行った夜市というこの世のものではない祭りを再度訪れる男の話です。どうしても手に入れたかった“野球の才能”を、弟と引き換えに妖怪から買った主人公は、大人になっても罪悪感にさいなまれていましたが、ある決意を持って再度夜市に行き、弟を取り戻します。そのある決意とは? 人攫いや永久放浪者などの妖怪がでてくるホラーですが、ファンタジーともいえる美しい文章と表現、ノスタルジーさえ感じさせるこの世界観は、恒川ワールドともいえる独特のもので、深い漆黒の穴を覗いているような気分にさせられます。

雷の季節の終わりに』は、幻想的な恒川作品全開の2作目。この世とは違うが、でも日本の山奥にでもありそうな“穏”という村での人々の話。風わいわい、鬼衆、闇番などの『夜市』に通じる雰囲気の異世界の住人が、恐ろしくもあり、しかしどこか懐かしく感じられる作品です。絶対悪ともいえる脇役が出てくるのも背筋がすうっと凍えるような感覚をおぼえます。

「ヤングサンデー」に連載されていた「まつろはぬもの」は、『夜市』に収録されている「風の古道」を原作にしたコミックスで、原作と少し異なった世界になっていますが、こちらもお薦めです。

 とにかく幻想的でありノスタルジックな恒川光太郎さんの世界は、日々疲れた心と身体を一旦異世界にトリップし、リフレッシュさせ、浄化までさせてくれる、心のサプリのような作品群です。また、ハードカバーすべての作品の装丁が美しく、この恒川ワールドをしっかり表現しているので、すべての作品を並べて売りたい! と思わせてくれるのも、書店員として嬉しい限りです。