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お花見に行くのを我慢してでも読みたい「花より団子」本

O・ヘンリー『最後のひと葉』では、生きていくということは、自分一人ではないということを学ばされます。

平坂書房MORE’S店(神奈川)疋田直己さん

 立春が過ぎ、旧暦では春のこの季節。まだまだ寒い日が続きますね。「春」といえば「花見」ですが、日が長くなる季節だからこそ手に取って欲しい一冊を紹介します。

 一つ目の作品は重松清の『十字架』(講談社)です。子供を持つ親御さんや教育に関心のある方に是非読んで頂きたいです。いじめを苦に自殺した同級生。その遺書に名前を書かれた主人公と、自殺のあった日が誕生日だったクラスメートがその後の二十年に及ぶ苦悩=「十字架」を背負って生きていく物語です。タイトルに相応しく亡くなる側からの視点、さらに加害者側の痛み。同級生を失った「記憶」=「十字架」として描かれており、その両方をバランスよく描いた力作です。

 二つ目の作品は中田永一の『くちびるに歌を』(小学館)です。合唱部という活動を通してそこから生まれる人間関係、その弊害などを乗り越えて生きていく主人公。「ひとつしかないこの胸が何度もばらばらに割れて苦しい中で今を生きている」。この言葉が意味するように、現代社会の窮屈な空間を大人と子供の境目である中学生はどのように感じ取ったのか。泣けます。

 最後の作品はO・ヘンリー『最後のひと葉』(新潮社)です。病気を患ったジョアンナが生きる気力を無くし、外を見ながら友人のスーに「あの蔦の葉が全て落ちた時に私は死ぬ」と漏らす。階下に住んでいた画家べアマンは二人を挿絵のモデルとして娘のように可愛がっていた。スーがジョアンナのことを話すとベアマンは悲しんだ。嵐の日に葉が一枚になったがなかなか落ちない。この葉こそベアマンが描いた最高傑作であった。ジョアンナは快方に向かうが、ベアマンは亡くなってしまう。この短い小説の中にいろいろな学ぶべき要素があります。生きていくということは、自分一人ではないということです。目に見えない形で支えられ、助け合い、それが生きているということなのです。


 今回は「生きる」という着眼点で作品を紹介しました。読書を通して考えて頂けたら幸いです。


正直、この本を一番に売りたいと思っている「秘蔵っ子」本

乾ルカさんの『花が咲くとき』では、少年と、少年を見守る大人の目線とが描かれ、読んで行くうちに優しさが心に広がります。

紀伊國屋書店富山店(富山)小作昌司さん

 ある程度の年齢になるとなかなか見に行けない映画というものがある。そう、アニメ。巷で流行っているらしいが。本ならいいか。うっ、お昼ごはんを食べていて涙が。新海誠さんの『小説 君の名は。』。大昔、隕石が山間の集落に落ちて大惨事となり村は滅びる。時が経ち、また彗星がやってきてふたたび……。人はそれを記憶に留め、伝統の組紐と舞いで後世に伝えようとする。違う時代を生きる都会の男子高校生と山間の集落に暮らす女子高生が入れ替わり不思議な体験をする。現実の中で「まだ見ぬ誰か」。記憶を頼りに探そうとするが……あなたは誰? 君の名前は? 記憶がどんどん消えてゆき……。2度目の隕石落下の時、過去を変える事が出来るのか。読書入門にもお勧め。読みやすくて良い作品だと思います。あなたの、君の名前は?

 もし過去に戻れるとしたら何がしたいですか? ただし現実は変える事ができないのですよ。川口俊和さんの『コーヒーが冷めないうちに』は、劇団脚本家兼演出家の著者が贈る4つのストーリー。私を置いて海外勤務に出た彼氏との最後の時間。実家に戻って一緒に旅館をもり立てていきたかったが事故で亡くなった妹。記憶が日に日に消えて行くご主人を一看護師として接する妻。言えなかった事や聞けなかった一言。現実は変わらないけど本当の気持ちを確認するために家族と愛と後悔の物語。タイトルの意味はコーヒーが冷めるまでの間だけ過去に戻れる。その短い時間があなたに大切な時をプレゼントしてくれます。女性の方にも贈り物にもお勧めの1冊。

 乾ルカさんの『花が咲くとき』は、すこし内気で思った事が言えない小学生と近所の変人と思われている老人が一緒に旅行をしながら成長していく物語。心臓に持病を抱える老人は口には出さないが過去に別れを告げ、許すために北海道から東京、若狭、九州へ。その途中で心優しい人たちと出会いながら旅は終盤へ。皆さんが小さい時にも近所に怖いおじさんっていませんでした? 周囲の大人が優しさで見守ってくれていただけかも。全国の書店員がお薦めしているということを後から知り、私も読んでみました。子供を見守る大人の目線と全然、周りが見えていない少年の目線。読んでいくうちに優しさが心に広がります。

 

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